AIによる音楽制作は、かつてないスピードと多様性をもたらした。膨大なデータを学習し、ジャンルやムードを指定すれば、数分で無数のトラックを生成できる。だが、そこに「これが良い」と判断する存在が不可欠になる。
AIが生み出すのは、あくまで膨大な選択肢。どれを選び、どこで使うか、何を伝えたいか、その意図を決めるのは人間だ。無限の音楽が生まれる時代、「選ぶ」こと自体がクリエイティブな行為になる。
DJは、既存の音源を選び、つなぎ、場の空気を読みながら新しい流れを作る。AI時代の音楽制作も、根本は同じ。AIが生成したトラックを聴き比べ、どれを使うか、どうアレンジするかを決める。その時、必要なのは「感覚」だ。何が今の空気に合うのか、何が自分らしいのか、どんなメッセージを込めるのか。AIはその判断を下せない。
AIの進化で「作る」ことの意味が変わる。手を動かしてゼロから作るのではなく、膨大な可能性の中から「選ぶ」「組み合わせる」「編集する」ことが主役になる。だが、どんなにAIが進化しても、その最終判断を下すのは人間。DJ的なキュレーション能力、直感、世界観。それが音楽の「顔」になる。
AIが音楽を作る時代、人間は不要になるどころか、むしろ「選ぶ力」「決める力」がより問われる。AIの大量生産の中で、どれを「自分の音」として出すのか。そのセンスが、これからの音楽を決めていく。
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